ドライマウスは口腔乾燥症とも呼ばれおり、その名の通り、口の中が乾燥してしまう状態をいいます。近年増え続けている現代病の一つだとも言え、特に女性に多い傾向があります。また、生活習慣も大きく関係していると言われています。
ドライマウスはこれそのものが病気ではなく、いろいろなことが原因となって起こってくる症状です。ドライマウスは「ただ口が乾くだけ」と軽視されがちなのですが、放置しておくと、健康にとって様々な悪影響が現れる「万病の元」となることもあります。
当てはまる症状があれば、ドライマウスの可能性があります。
健康なお口の中というのは、唾液で潤っています。唾液には「お口の中の洗浄」「粘膜の保護」「抗菌作用」「免疫作用」「お口を中性に保つ作用」「食べ物を消化する作用」「初期虫歯を修復する作用」というような多くの大事な働きがあります。唾液が少なくなり、ドライマウスになると次のような悪影響が起こってきます。
歯磨きが不十分であったり、糖分を摂りすぎてしまうとプラークはどんどんたまり、歯周病菌も増殖していきます。そしてこの歯周病菌が増えすぎてしまうと、この歯周病菌を体が排除しようと免疫を働かせ、歯茎や歯を支えている骨などに炎症を起こし、歯を支えている組織を破壊していくのです。
唾液が少なくなると、お口の中が洗浄されず、悪い細菌も増えますので、虫歯や歯周病というような感染症にかかりやすくなり、悪化のスピードも速くなって、歯がボロボロになることもあります。
唾液の少ないお口の中は細菌であふれていますので、口臭も強くなります。
お口の粘膜が唾液で保護されていないと、ちょっとしたことで粘膜が傷つきやすくなり、お口の粘膜のいたるところに痛みを感じたり、口内炎が頻繁にできる原因になります。
普段は意識しませんが、ものを飲み込む際には唾液が大きな役割を果たしています。唾液が少なくなることにより、ものが飲み込みづらく、また唾液によって食物が消化されないため、胃腸にも負担がかかります。
唾液がなくなると、外部からのウイルスや細菌に対して免疫力が働きにくく、感染症にかかりやすくなります。
特に高齢者の場合、スムーズに飲み込めなくなることにより、食べ物が気道に入り誤嚥性肺炎を起こすことがあります。
唾液は味の情報を運ぶ役割もしていますが、唾液が減ることでその働きが衰え、味覚を正常に感じられなくなる「味覚障害」を起こすことがあります。
ドライマウスは歳をとると起こることが多いことから「加齢現象」として、あきらめられがちですが、実は生活習慣が原因になっていることが多いと言われています。
例えば次のような多くのことが原因になっていると考えられています。
人はストレス状態になると、自律神経の働きにより唾液の分泌が抑制され、お口の中が乾いてしまいます。
タバコを吸うと、自律神経の働きにより唾液の分泌が低下して、お口が乾きます。また、アルコール類やカフェインには利尿作用がありますので、お口の中が乾いてしまいます。
薬には大抵どんな薬にも副作用がありますが、なんと薬の80%くらいは副作用として「口が乾燥する」という症状を起こすことがわかっています。特に女性の場合、更年期障害の薬として出される抗うつ剤の副作用で口が乾燥する人が多いとされています。
こちらは唾液の分泌が減るというよりも、口で呼吸をすることで口の中が乾いてしまうことで起こります。歯並びが原因で口が閉められない場合や、アレルギー性鼻炎などが原因で口呼吸をしていると、口が乾きドライマウスとなります。
最近では、スマホやタブレット、パソコンなどでコミニュケーションを取る人が増えており、会話をすることが少なくなっています。喋らないと口の筋肉が使われず、唾液が出にくくなります。歌を歌うことも効果的です。
糖尿病や腎不全の影響でドライマウスを起こしやすくなります。また、シェーグレン症候群という膠原病によっても唾液の分泌が引き起こされます。
唾液の分泌の低下は加齢現象でも起こります。そのため、年齢を重ねるにつれ、誰にでも起こる可能性があります。
ドライマウスは、ちょっとした工夫をすることで改善することも可能です。「ドライマウスかな?」と思ったら次のことをためしてみましょう。
ドライマウスを改善する食べ物、つまり唾液を出させる食べ物と言えば、酸っぱいものが思い浮かびますね。でも、酸っぱいものの摂りすぎは、歯を溶かす「酸蝕症」を引き起こしてしまうこともあるので、摂りすぎは禁物です。酸っぱいものも時々はいいですが、酸っぱいもの以外にも唾液を出してくれる食べ物がありますのでご紹介しましょう。
ドライマウスに対する手軽に行える対策法として、ガムを噛むという方法があります。ガムを噛むことで、咬筋(噛む筋肉)が動きますので、唾液腺も刺激され、唾液が出てくるのです。これだけで随分ドライマウスが改善する人もいます。
ガムを噛むという行為によって唾液は出やすくなりますが、砂糖入りのものでは糖分が虫歯の原因になってしまう恐れがあります。そのため、虫歯予防効果の高いキシリトールガムを噛むのがオススメです。特に食後にキシリトールガムを噛むことを続けることによって、虫歯予防効果が高まると言われていますので、毎食後に噛んでみてはいかがでしょうか。ただ、キシリトールガムにもいろいろあります。キシリトールの配合率が製品によって違うのです。より高い効果を求めるのであれば、歯科医院で売られているキシリトールの配合率が高いキシリトールガムがおすすめです。
要介護などが理由で、ガムを噛むなどのような、自分でできるドライマウス対策が難しい方の場合には、ドライマウス対策グッズとして、お口の保湿ケア用品を使うという方法もあります。もちろん介護される方でなくても使っていただけるようなグッズですので、ドライマウスが気になる方は使ってみると良いでしょう。
お口の保湿ケア用品としては、スプレータイプ、ジェルタイプ、マウスウォッシュタイプなどがあります。スプレータイプは外出する時、ジェルタイプは就寝前にしっかり保湿したい時、マウスウォッシュタイプは歯磨きの後に使う、など使い分けると良いでしょう。
もしもドライマウスがなかなか改善しない場合には、一度歯科で相談してみましょう。歯科が窓口となり、ドライマウスの診断や治療を行い、それで改善することも多いものです。歯科で行う具体的な治療としては、唾液腺のマッサージ、ガム(歯茎)マッサージ、そして口の筋肉や舌の運動の指導・練習などです。
場合によっては歯科的に一歩踏み込んだ治療や他の診療科との連携が必要になることもあります。
例えば、口呼吸が原因の場合、口が閉まりにくい出っ歯や開咬などの歯並びを矯正することで改善する場合も多くありますが、鼻炎が原因の場合には耳鼻科的な治療が必要になるでしょう。全身的な病気が原因の場合は、そちらの治療も進めなければなりなせん。毎日服用している薬が原因の可能性が高い場合には、投薬している医師に相談し、減薬もしくは薬の変更ができるか、確認した方が良い場合もあります。
ドライマウスでお悩みの方は、まず一度ご相談していただくことで、いろいろな解決法が見つかると思います。ぜひお気軽にご相談ください。
池田会のイースト21デンタルオフィス 歯科衛生士 小林が「歯の磨き方をプロが伝授」で出演いたしました。